Ida_Photo居田 克巳

ヘリカル研究部・高温プラズマ物理研究系・粒子計測研究部門・教授

研究内容

プラズマに入射された中性粒子ビームとプラズマとの反応によって生じる光の計測を通じて、プラズマ中のイオン温度、電場、磁場、密度揺動、高エネルギー粒子の分布を観測し、電場シアと輸送との関連、磁気シアと安定性との関連を調べています。

プラズマは高温になると、内部から出てくる光の波長が短くなります。その結果、可視光はほとんど出なくなり、紫外線やX線が大半を占めるようになります。ところが中性粒子ビームをプラズマに入射すると、ちょうど入射されたところから可視光が出てきます。この光を利用してプラズマの性質を調べる手法を、ビーム分光法といいます。ビーム分光法として、大型ヘリカル装置では以下の分光を行っています。

1 荷電交換分光(Charge eXchange Spectroscopy CXS):イオン温度分布計測

プラズマのイオン温度分布と電場分布は、閉じ込め性能を研究する上で必ず計測しなければならないものです。温度と電場は中性粒子ビームと不純物との荷電交換反応を利用して、不純物から発せられる光の「波長広がり」と「波長シフト」から求められます。大型ヘリカル装置(LHD)においても、イオン温度分布を計測するための荷電交換分光システムが取り付けられています。

2 モーショナルシュタルク効果(Motional Stark Effect MSE) 分光:内部磁場の計測

LHDにおいて、プラズマ中の磁場のほとんどは超伝導のヘリカルコイルで生成されているのですが、中性粒子ビームによって駆動された電流や、プラズマ自体の圧力によって発生する電流による磁場も存在します。プラズマ中の磁場の変化には磁場の強さと磁場の向きがありますが、プラズマの閉じ込め性能はこの磁場の向きに非常に敏感なので、わずかな磁場の方向の変化がプラズマの閉じ込めを大きく変えることも解ってきました。そのために、プラズマ内部の磁場の向きを正確に計測することが求められるようになってきました。プラズマから出てくる光の偏光の向きが磁場に平行又は垂直になるという性質(この性質をモーショナルシュタルク効果(MSE)といいます)を利用して磁場の向きを求めます。偏光の向きを計測するには、異なった角度に偏光軸を持った直線偏板を通してプラズマを観測し、その強度比から磁場の向きを求めます。

3 ビーム発光分光(Beam Emission Spectroscopy BES):プラズマ内部の密度揺動の計測

電場シアと揺動の関連についての研究は重要で、世界の主要な研究所で精力的に行われています。電場シアによる揺動の抑制は、プラズマの輸送を決定している乱流が、電場シアによるシア流によって抑えられる現象です。安定した流体ではシア流が乱流を作り出しますが、加熱によって強い乱流が存在するプラズマでは、逆にシア流が乱流を抑えます。この乱流とシア流との関連を解明するために、乱流揺動の局所的な計測法が必要となります。ビーム放射分光法(BES)は、中性粒子ビームとプラズマ中のイオン及び電子との衝突過程で発せられる水素のバルマー線(ビーム輝線)の揺動成分を計測することにより、プラズマ密度の揺動を測定しようとするものです。このBES は揺動の計測の中でも最も有力なものとして注目を浴びており、帯状流の発見もなされています。

4 高速イオン荷電交換分光(Fast Ion Charge eXchange Spectroscopy FICXS) :プラズマ内部の高速イオンの分布計測

プラズマ中に入射された中性粒子ビームは、プラズマでイオン化して高速イオンとなります。この高速イオンがプラズマ中で衝突を繰り返す過程においてプラズマが加熱されて、高温のプラズマが生成されます。この衝突過程を調べるには、プラズマ内部の高速イオンの分布を知る事が重要となります。この高速イオン荷電交換分光は、通常の荷電交換分光を発展させたもので、今まで計算に頼っていた高速イオンの分布を実際に計測することができるという点で画期的であり、近年注目を浴びている計測です。

受賞

1996.3.22
プラズマ・核融合学会賞・第4回論文賞
2010.3.5
平成20年度JT-60共同研究優秀賞(日本原子力開発研究機構)
2010.4.13
平成22年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞
2011.12.6
2011年度仁科記念賞

 

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